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僕はかつてひと頃、〝未来〟の虜になったことがある。

どういうことかと言うと、(ご多分に漏れず)コンピュータ環境がもたらす、テクノロジーの未来とかいうものにうつつを抜かし、自らがたかだかの寿命にたゆたう空蝉(うつせみ)の存在であることを忘れていた。
根拠の怪しい希望に胸踊らせるだけのデイドリーム・ビリーバーになってしまっていたのである。

要するに、〝個〟としての〝実〟を失うという、気味の悪いトラップに嵌っていたわけだ。

大体、テクノロジーが実現する未来像というのは、ある意味、自己拡張の幻想だと思うのだが、皆が等しく拡張されてしまえば、それは拡張されたのか何なのかすらわからないではないか?

誰もがスーパーマンで、不死の存在。おまけに、何でもかんでも卒無く便利であったとして、それはそれでさぞかし良かろう。しかしそれはそのまま、人の幸福や生き甲斐に通底するものでは決してない。

人間とは、明日死ぬから即ち不幸というものではないのである。

少なくとも僕には、漠たる未来の理想郷など夢想している暇など到底、無い筈なのだ。


この続きは http://longtailscafe.com/backnumber/backnumber_21.html

2012/11/15 06:19 投稿

ロングテールズFILE;vol.31 その男、トラヴィス・ビックル。up しました!

ニューヨーク、というと、まず最初に...