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さてさて、

今回は、茅野市美術館です~♪

茅野市美術館は以前から、

地域にゆかりの深い作家さんの展覧会をやってきました。

当ブログでも紹介した、松樹路人や藤森照信 もそうですね♪

いずれもとても面白かったのですが、

今回も期待を裏切らない素晴らしい展覧会でした!

小堀四郎のことは、残念ながら、全然知らなかったのですが、

それも仕方ないのかもしれないのは、

恩師 藤島武二の助言を守り、

生涯、画壇や画商とは関わらなかったそうです。

つまり、作品を売らなかったということ。

唯一、出品を東京美術学校同期生による「上杜会」のみとしたそうです。

同期には、猪熊弦一郎、牛島憲之、荻須高徳、小磯良平、山口長男ら、

のちの日本洋画壇を担う実力者が揃っていました。

ちょうど、学芸員さんによる、ギャラリートークが聞けて、

学芸員さんも言っていたのですが、

画壇にも画商にも関わらず、ただただ自身の信じた道を行くという、

小堀のような作家は、もう出てこないだろうと…。

恩師 藤島武二もすごい助言をしたものです。

「君が真に芸術の道を志すならば、出来得ればどこにも関係するな。芸術は人なり」

「俗世に求めている間は人間は出来るものではない」と!

それを守った小堀さんもすごい…。

でも、そういう制作姿勢って、やっぱり画風にも出るんでしょうかね。

特に、疎開先の蓼科で、戦後、家族を東京に戻し、

ひとり残って描いた作品群は、草木、月、星…など、

孤独な中で、自然と向き合った感動が伝わってきました。

個々の作品でいうと、

”春宵”は、今展覧会最初期 東京美術学校時代の18才の作品で、

この時から、すでに満月と木というモチーフが登場しています。

これが、とてもいい雰囲気の作品なんです。

やはり、才能というのはすごいですねー。

もう一点、学校時代の作品で、

”影”は、ロウソクをかざした着物姿の女性が、佇んでいるもの。

これがまた、陰影をたたえて、素晴らしかった…。

ラトゥールとかレンブラント、高島野十郎を彷彿とさせました。

その後、フランスに5年ほど滞欧するのですが、

その頃から、人物画が多くなった気がします。

小堀さんは、老人の絵が味があっていいんですが、

滞欧時に描いた”モンシーニ兄弟”とかも、

どこかチャーミングで、なんか微笑んでしまいます。

そして、滞欧後に世田谷にアトリエを構え、

森鴎外の次女 杏奴(あんぬ)さんと結婚。

杏奴さんは、執筆活動などで、小堀さんを支え続けたそう。

この時代に描かれた”老人像”もすごい雰囲気があって、いいんです。

なんでも、モデルになってもらった”老人”をとても気に入って、

一年かけて、モデルになるよう説得したとか(笑)

すごい執念(苦笑)。

だけど、絵を見ると、なんだかわかる気がしますよ。

そして、1945年からの蓼科に疎開し、

戦後はしばらく一人で暮らした計10年の蓼科時代。

ここで、小堀さんの代表的モチーフである星や月が出てきます。

当時、親湯(しんゆ)温泉の社長さんと懇意で、

夜道を歩きながら、入りに行ったそう。

その風景に魅せられ、描いたということ。

さぞ、素敵な景色だったんでしょうね。

ちなみに、小堀さんは、星はひとつよりも、たくさん描きたいそうです。

1962年制作の”蓼科(月明かり)”は、小品でしたが、とてもよかった…。

学芸員さんもオススメの作品でした。

どこかルオーを感じさせます。

きっとルオー作品は、好きだったんじゃないかな~。

この作品を基に描いた大作が、”二人で歩いた厳しい道”

右端に漢詩”道可動非常道”

(道として明示できるような道は絶対不変な道ではない)

という老子の言葉が、ちょっと見づらいですが、書いてあります。

小堀さんは、絵の中に結構、

漢詩やタイトルなどの文字を書いているんですよねー。

そして、今展覧会のポスターにもなっている、無限静寂の三部作。

以前は、カトリック築地教会に飾られていた作品で、

今は、他作品とともに親族より一括で渡され、世田谷美術館所蔵になっています。

無限静寂(宵の明星ー信)は、遺跡調査団随行で、

イランに行った際、描かれたもの。

星ひとつと、宵の空の赤・青の対比が、

とても幻想的です。

無限静寂(深夜の星ー望)は、イラクでの作品。

これは、星がたくさん描かれていて、

雨雲の暗さと星の明るさとの対比がキレイ…。

最後に、無限静寂(暁の星ー愛)は、やはりイラクでの作品で、

明け方も描いておくか!ということで、描いたそう(笑)

青・緑・黄の空に、星がたくさんあって、タメ息ものでした。

あと、入口のコーナーで、豊田市美術館が制作した、

小堀さんが90才の時のドキュメンタリー映像が見られます。

杏奴さんとの仲睦まじいおしどり夫婦ぶりが、なんともほほえましい。

話している小堀さんを見ると、聖人君子とか仙人とか、

そんな偉そうな感じではないんですが、

でも、なんていうのかな…、

豊かで楽しそうで、そして清貧さはとても伝わってきました。

お父さんと恩師 藤島武二との約束を頑なに守った、

”何かに裏打ちされたまっすぐさ”

皆さんも是非、見てくださいねー♪

8/27までです。



茅野市美術館 HP

http://www.chinoshiminkan.jp/museum/2012/0728/index.htm