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ヴァロットン ―冷たい炎の画家

<三菱一号館美術館> 胸騒ぎのする風景、不安な室内、クールなエロティシズム―。まるで解けない...

このヴァロットンは油絵だけでなく多くの版画も手掛けていて、今回は小さな版画作品を含めて約130点が一同に会したなかなかのボリューム感でした。

作品の多くは「音を感じない」空気感で、評の中で度々言われるように、独特の緊張感や虚無感が伝わってくるものだったように思います。

日常生活のワンシーンを切り取ったような作品でも、それは実は実際の光景ではなくて、彼の心象風景なんじゃないかと思うような。
「取り繕った日常の裏にある現実」とでも言うような、息を飲むような....。

彼自身、家庭に自分以外は奥さんとその連れ子という「疎外感」の中で暮らしていたようですし、多くの作品からは彼の女性に対する一定の距離感のようなものを感じました。
きっと、対女性関係の上ではあまり幸せとは言えない人生だったのではないかと想像してしまいました。


油絵もとても良かったけど、版画作品もとても良かったですね。
多色刷りではない版画なので白黒なのですが、その黒の使い方が絶妙。
特に<アンティミテ>というタイトルの連作版画は、そのモチーフ・内容に対する作品タイトルが揶揄的で、1つ1つ「うんうん」と頷きながら観た俺でした。
例えば作品の内容が「白く浮かび上がるドレスの婦人に言いよる黒い紳士、なのに女性は男性に視線を向けようともしない」という作品のタイトルが「お金」ですから....。「そういうことか....」と頷いてみてしまいました(笑)
男女間の裏側を覗き見ているような作品で、とても興味深かったですね。

そしてそして、何といっても多くの裸婦作品。
「ヴァロットン」で画像検索をしたらいくつもの裸婦作品の画像が見られるので是非一度どうぞ。

惹かれたのはそれらの裸体がとても「現実的」だということ。
後ろ姿の作品が多いのですが、そのお尻は文字通り「臀部」で、肉付きだったり質感だったりが、「本物感」アリアリなのですよね(笑)

実際、彼はこの「臀部」に一定のこだわりがあったようで、展示作品の中にあった「臀部の習作」という油彩なんてもう....思わず手が伸びてしまうような「臀部」でした(笑)
決して単純な「美」ではない魅力があって.....たとえ描き手に鬱屈とした何かがあるにしても(笑)
是非「ヴァロットン 臀部の習作」で検索してみてください。これは本当に一見の価値有りです(笑)

そんな生々しさを感じる様な描画であるにも関わらず、絵の中の裸体と作家の間には一定の距離感のようなものを感じました。「触れたいのに卑屈がゆえに触れられない」みたいな。

他の画家の裸婦作品を観ると、「あぁ...多分この女性と画家...デキてるな...」と思うような作品もあるんですけどね(笑)

もしかしたらだけど.... 多少崩れたような、リアリティのある肢体のラインを描くことで、その裸体を自分のものにしようとしているのかも知れなですね。手の届くものとして...。

代表的な裸婦画は「赤い絨毯に横たわる裸婦」という作品で、これはもう私としても理想的な裸婦画でした(笑)

ということで、1点1点の作品に「裏」を感じながら観るという、なかなか興味深い絵画展でした。
単純明快を好む人にはちょっと楽しめないかも知れないかな?

2023/11/19 16:58 投稿

やはり難しい

早瀬龍江氏が埼玉県立近代美術館の収...
2019/10/29 18:00 投稿

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2016/05/15 22:17 投稿

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