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轟亭の小人閑居日記馬場紘二

荏原中延の酒井歯科医院の酒井呈先生から「歯科医院閉院のお知らせ」とい

うお葉書をいただいた。「当院は昭和四年当地で開院以来八十年を迎え、二

代に亘りご支援ご厚情を戴きましたが、http://www.shikakiki.jp/category-114-b0-%E6%AD%AF%E7%A7%91%E7%94%A8%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%AC%E3%82%B9-%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%BC.html院長八十歳を機に、平成二十一年三月

三十一日を以って閉院することと致しました。」歯科は終業するけれど、今後

は息子さんのクリニックを拡充して、さらなる地域医療の充実を目指すというお見事、ご立派、というほかない父が死んで中延との縁がなくなってから、ご近所の歯医者さんに診てもらっ

ているが、酒井歯科医院は子供の頃からの罹り付けだった。20年ほど前の昭

和63(1988)年7月、酒井呈先生に舌ガンの原因になる危険なものだという

「転移歯」を抜いてもらった時、つぎのようなことを「等々力短信」に書いて大先生の時代には、モーターの回転を、まだ「まだらの紐」が伝えていた父に連れられて、大先生のハゼ釣りのお供をしたことがあった。釣針を呑み

込んだハゼの口に、道具を差し込んで処理するのが、お得意だった。大先生

は俳句もよくし、その句集にhttp://www.shikakiki.jp〈手をはたく鯊のぬくさや冬に入る〉〈覗き込む人

の顔みるはぜ上目〉〈あくまでも鯊強情に口あかず〉などの佳句がある。ハゼ

にも「あーん」と、言われたのだったろうか大先生は、息子である今の院長先生のお名前を「呈(すすむ)」と命名された「口の王」である。名前通りの名人になられたから、こちらが観念するまで

だけが問題で、例の椅子に横になりさえすれば、最新最高の技術で治療して下

さる。その安心感と信頼感は、この町に根を下ろし、親子二代にわたって、

2015/11/06 19:48 投稿

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