小さなイングリッシュガーデンが…
イングリッシュ・ガーデンの文字を見て展覧会場全体が雑然と群生した草花に覆われ色とりどりの花が咲き誇ってると妄想し、キュー王立植物園所蔵と書かれてあるのを見ては「どうして運ぶの?」と妄想を「天空の城ラピュタ」にまで飛躍させて…でも実際は所蔵のボタニカル・アートが額装され整然と並ぶ展覧会です。大英帝国の時代に世界各地で採取された植物をもとに描かれたボタニカル・アートは実物に忠実な彩色と精緻な描写がとても美しく、現代の植物図鑑の写真よりもそれぞれの特徴が正確に伝わってきます。中でも異彩を放っていたのが18世紀にDrソーントンが編纂した「フローラの神殿」(植物図譜)に収められてる銅版画で、他のボタニカル・アートとは違い背景が描かれています。大輪の花を咲かせた月下美人を描いた「夜の女王」の背景には午前0時を告げる時計台と満月が描かれダークな色合いで妖しい雰囲気を漂わせていました。また植物図集としては最古の17世紀に出版された「アイヒシュテット庭園植物誌」は黒のインクが繊細さを際立させていて、19世紀の女性旅行家マリアンヌ・ノースが描いた世界各地の風景画の中に「知恩院の鐘」と題した大鐘楼が描かれた作品もあって驚きです。これら以外にもロンドン万国博覧会の会場として建造された全面ガラス張りの巨大な温室のようなクリスタル・パレスに関する資料やダーウィン直筆の資料、花をモチーフにしたウィリアム・モリスデザインのランプやドレス、ウェッジウッドの食器etc.があり、花のデザインで高島屋の薔薇の包装紙を頭に浮かべ、キュー王立植物園が所蔵する現代の植物画の中にキノコ画家?の小林路子さんの作品を見つけて嬉しくなった私です。鑑賞のあと中庭に出るとレンガで囲われた小さなイングリッシュ・ガーデンが造られ色とりどりの花が咲き誇っていて、私の妄想が少し現実になった展覧会でした。