ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
当人設計の国立西洋美術館でのル・コルビュジエ展に行きました。建築家の前身、ピュリスム画家としての絵画に興味がありました。
対象物はテーブルに並べた日用品で、前後に重なる立体の遠近をなくして平面化させ、物の外形線で分割し色分けしています。色はすべて中間色です。
機能をもつ道具を、デザインや図形のように幾何学化させることで具象としての成分を抜き取り、抽象化させているのだと思います。
分割と配色への強い意識を感じます。そこにはキュビズムにあった情動性がなく、それがピュリスムなのでしょう。これがのちに建築につながる意識?中間色も自然環境に馴染む色ということで偶然ではない気がします。
この分割と配色の作業は、私自身やりたくなるようなたのしい”遊び”と思いました。
遊びと言うと怒られるかもしれませんが、物の外形線で平面を分割しては色をつける作業は、対象物を並び替えては際限なく挑戦できる遊びのようです。事実、コルビュジエは何度もくり返し同じ日用品をモチーフに描いています。
情動性を入れずにいくつものパターンを生む遊びのような抽象画、そういう押しつけがましくない絵画が私は好きです。作家自身は思想に満ちた人物であっても、あえてそれをテーマにしない。そういうことで私も一つには単なる模様や図形を絵画にしています。絵画を見る人がそこに自身を投影して情動を発動させ、それをもって作品が成立するというのもいいと思っているからです。