山梨県立美術館「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」を観に行ってきました
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投稿日 | 2024年12月27日 20:17 |
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特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸と...
*チケットプレゼント* 今注目の現代作家17名による木彫、漆工、金工、陶磁、ガラス、ペーパー...
先日に本サイト事務局よりプレゼント応募の当選チケットをお送り頂き、早速頂戴したチケットにて年末休館する直前ながら年内のうちに展覧会を拝見させて頂きました。この度は大変貴重な機会を賜りましてどうも有り難うございました。この場を借りて改めて御礼申し上げるとともに、展覧会レポートとしてここに取り急ぎご報告させて頂きます(「文章の極意は過不及なし」と言った作家里見弴の言葉を心に留めつつ)。
今回の展覧会の「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」という名前の通り、素人にはどのように作られているのかそれこそ人間業とは思えないような繊細な作業を必要とする工芸技術の粋が集められています(木彫、牙彫、金工、漆工、七宝、陶磁、ガラス、水墨画、ペーパークラフト、切り絵、刺繍)。来月開催のトークイベントのタイトルにある「誰にもできない」ような明治から現代までの作家で職人の手による熟練の技で、非常に丁寧で緻密に仕上げられた作品の数々を前にして愕然とさせられました。
特にそのなかでも木彫では、現代作家・大竹亮峯の「月光」が前述の通り彫刻作品ながら花器に水を注ぐと月下美人の花が開くという驚くべき仕掛けが施されています。「動く彫刻」と呼ばれるその開花の様子は大竹氏の公式サイトでも動画で見ることができ、個人的には初めて見るその花の美しさに大変目を惹かれました。明治工芸の彫刻家高村光雲の「白衣観音像」も最晩年の作品ながら非常に細かく彫り上げられており、いずれも目の前の花や仏に思わず手を合わせたくなるような気持ちになります。
上部の写真にもあります受付で頂いたワークシートや作品横のキャプションなどを見ると、その他陶磁やガラスなど技術的な内容が詳しく説明されており、これらの作品がどのように作られたのかがよく分かるようになっていました。ただ動物や人間、草花などがモチーフの工芸作品も技法の部分が注目されがちですが、それぞれがまるで生きていて動いているように感じられるその不思議さとともに大変感動したこともまたここに強調しておきたいと思います。
その他工芸の関連作品として展示されている日本画では、最近放送された某鑑定番組で「応挙と聞けば偽物と思え」と言われるほど人気があって偽物も多いと言われる円山応挙の「虎図」でその本物に触れるとどこか愛くるしい虎の力強い筆致に驚かされます。ちなみに観る者に愛くるしいと感じさせる理由としては、この作品が描かれた江戸時代に実物の虎を見ることができなかったため、資料とともに実際の猫を参考に描いていたのもあるかもしれません。
また近年急速に再評価が進んでいる渡辺省亭の「牡丹に蝶の図」は、その所蔵者で本展監修の美術史家・山下裕二氏が「あまりにも素晴らしいのにあまりにも安いので、なかば義憤にかられて買ったようなもの」と過去に語っています。実際にこれも実物を観ると花や蝶の細部まで非常に集中して描かれた筆遣いの素晴らしさに圧倒されました。画集や図録、評伝の表紙に用いられるほどの代表作というのも納得であると同時に、山下氏のご厚意にてそんな貴重な作品を観ることができて大変有り難く幸甚に存じました。
最後にもう一つ付け加えるならば、松竹梅に富士山、鶴と龍など吉祥のモチーフの作品、梅や藤、牡丹など冬に待ちわびる春の季節の作品を見ていると非常に明るく元気な気持ちになりました。このように今回の展覧会では新年にふさわしくめでたい作品も多く展示されていますので、この新年明けにぜひ多くの方に新しい気持ちで観てもらいたいと思います。会期は来年の2月2日までで巡回展としてはこれが最後となるゆえに、大変貴重な機会をお見逃しのないようにお願いします。