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F3展
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「日常」ってなんだろう。

3月11日の大震災を契機に、なにかが変わってしまったと感じている方も少なくないのではないでしょうか。

大きな被害に合っていなかったとしても、続く余震や、電気が限られた生活を経験し、当たり前だった日常は、当たり前ではなかったのだと思ったことがあるかもしれません。

 今回のF3展、「石橋百合香+金子絵美×栗原広佑」を見ながら、私はふと「日常」に思いを馳せていました。
 1階のギャラリー空間に展示されていたのは、通っていた学校がずっと同じだったにも関わらず、F3展で合うまでお互いのことを知らなかった、石橋百合香と金子絵美の作品。

 石橋百合香の作品は、「アイ」や女の子をモチーフに、アクリル絵具で独自の世界観を描出している。その作品は、《アイ揺れる、アイ。》や《アイ求め、アイ。》、《アイ溢れ、アイ。》をはじめとする題名からも分かるように、一見女の子の愛情をテーマにしているようでいて、実際は、女の子からある対象への愛ではなく、女の子の独自世界に根付く「アイ」、例えば自己を対象とする「アイ」、または好きなものを巻き込み、自己をも含め循環していく「アイ」を描き出しているかのよう。

女の子たちの瞳は、何を見つめているのだろうか。髪飾りも、画面を装飾する水玉模様も、彼女たちの瞳といっしょくたになって、私たちを甘い世界に誘っている。

 一方、金子絵美の作品は、アクリルとオイルパステルを用いており、モチーフも猿や鳥などの動物や、木などの自然物が中心。

その作品で印象的なのは、自然を独自の視点で描写するストローク。猿が描かれている《発見》では、猿が得体の知れぬものと出会った瞬間の「発見」と、絵を見ている私たちの、新鮮な描写を通じた自然への「発見」が重ね合わされているかのよう。

七色の鳥が寄り添う《日常》、木の根元と靄を描いた《居場所がある》も、その絵画だけで世界が完結するのではなく、絵を見る私たちにも世界が託されているように思われる。

 二人の作品は、作品の大きさも違えば、キャンバスの作り方も違うし、その上に描かれる主なモチーフも違えば、描くための画材も違う。

そんな二人は、F3展という場で出会った記念として、「お互いの作品を自分に一度取り込んでから自分の作品として表現するという実験」を試みます。

これは、「お互いの作品の特徴的な部分を自分の世界に取り入れる、相手の世界を受け入れ、自分の世界へと相手を招待する」行為。

F3展という場があったからこそ二人は出会うことが出来たけれど、もし同じ学校という共通する場がなかったら、この「実験」は実現していなかったかもしれない。

同じ学校という、ある一定の期間、沢山の日常を積み重ねる場があったからこそ、この「実験」は、日常を越えて存在するのかもしれません。
 地下のギャラリーで展示されているのは、栗原広佑のインスタレーションを中心とする作品群。

“picnic”,”Flat work#01”といった天然物を使った作品からは、人間と自然の関係性を考えさせられ、縮尺や遠近感が操作された平面作品”a boxed landscape”からは、人と、人やもの、街とのつながりは、人から対象への愛情、思い入れ、人の中での存在感により繋がり合っていることが示唆されているかのようです。

作品ファイルの《ハコモリ》の中で、彼は「自然素材により豊かな空間を得ることに疑問を持つ。どこからどこまでを自然素材と定義するか、私には分からないからだ。」と書いています。

確かに、自然を用いて自然より快適な空間を得るのは、技術を持つ人間のエゴなのかもしれない。しかし、仕切った空間を家に見立てた”The house of today”からは、存在している柱などを使いながら、自然を感じさせる素材を用いて、空間をより豊かに魅せようとする意気込みが感じられました。

印象的だったのは、パソコンやタバコなどの日用品が、そのまま白く塗られた“Living table”.白一色になっただけで、見慣れているものが途端に姿を変える―
 「日常」は、人が寄り添って生きて行くことで構成されてきたものでもあり、あらゆるものに囲まれた空間でもある。

見慣れた景色が、ある出来事によって変えられてしまったと感じたり、途端に無機質に思えてしまったりするかもしれません。

しかし、その変化さえも「日常」であるかもしれない。

 「とある〜の日常」?「終わりなき日常を生きろ」?

ギャラリーで作品を見ながら、自分のことについて考えてみるのも、時にはいいかもしれません。



レビュアー:慶野 結香

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