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F3展
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3人のアーティストの作風はまったく異なっているが、通底するものがある。それは、生きる力を与えることだ。


金子絵美の作品は、生きるよろこびを伝える。
日々の生活のなかで見落としてしまうものものを丁寧に汲みとり、ふとした瞬間の情景をドラマチックに描き出す。
モチーフである人や動物は、画面の中央に描かれ、しっかりとした存在感をもっている。日常や小さな出来事をテーマに制作しているが、金子の作品には力強さがひしひしとみなぎっている。
描かれた生物は、皆きらきらと輝いているけれど、それは外界の光によるものではない。生きている彼ら自身が、その凄まじい生命力によって輝いているのだ。
そのようすを観ていると、生きているというよろこびが、ゆったりと湧き上がってくる。
金子は、生きる私たちに命の尊さを改めて教示する。


石橋百合香の作品は、心の奥底に息づく感情を解き放つ。
画面を一見すると、女性の美しさを思わせる 装飾的な模様が私たちの目を奪う。しかし、絵のなかでひときわ私たちの心をとらえて離さないのは、女性の目だ。
描かれた女性の目を見つめると、その秘められた想いが観る者の脳裏を貫く。すると、美しく着飾った女性の本心が、私たちのなかに満ち満ちてくる。憎悪・嫉妬の感情が駆け巡り、あとには深い哀しみが残る。
ふだん押しとどめている感情を知ることは、自身の根源の認識につながる。石橋は、「それを受け入れ、一歩ずつ前に進もう」という強い心を、私たちに授けてくれる。


栗原広佑の作品は、生きることを実感させる。
栗原は、想像力豊かな表現で、私たちの営みを描き出す。
ここでは、真っ白で 小指よりも小さな人間たちがくらす立体作品に注目してみる。
白い卓上のそこここにいる人びとは、作品の一部ではなく、むしろ そのひとりひとりの生き方を見せている。マウスの上に腰かける人、メモパッドの上を歩く人・・・それぞれの人が豊かな感情をもち、時間の流れのなかで思いのままに生きる。
まるで空想の勝景のように思えるのだけれど、栗原がつくり出す人々の生活は、私たちの生活そのものなのだ。
毎日無意識に行っていること ―― 歩く、座る、物思いにふける ―― を、栗原は懇切に観察し、作品として見事に昇華させている。


平穏なくらしのなかで、徐々に無意識化してしまった「生」を、3人はそれぞれに解釈し、生きることについて熟慮するきっかけを与えている。




レビュアー:はまだ なつみ

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