【F3展レビュー vol.10】大政愛+塩満幸香 × 山本ひかり
彼女たち3人の作品は具体/抽象で二つに分けられる。
しかしながら、それらは共に平面でありながらも「生きていること」を感じさせるものだった。
【具体的に】
大政愛+塩満幸香 「いっしょに箱からとりだそう」
平面により描かれる絵は平面である以上は、どこか平面というフレームに納まりがちだ。
それを裏切るように、二人の絵に描かれたものはタイトルに沿うように、平面というフレームをするっと超える。
彼女たちはフレーム=箱から、動物やもののいきいきした姿をとりだそうとしているのではないだろうか。
一つ、白クマの絵をあげてみる。白クマは白であるのには間違いない。
体はしろくて眼と鼻は黒で…。こんな想像がつく。
そんな白クマを白で描くのではなく、様々な色彩を使うことにより、彼らのもつ雰囲気を脈々と感じるような描写がされている。
微笑み。喜び。悲しみ。
展示空間にいたものからそんな表情を読み取ることが出来た。
納まりがちと私が思う平面の中に確かな「生きていること」を感じさせてくれる。
【抽象的に】
山本ひかり 「句てん。」
まず、日本画のイメージとして浴衣を着た女性がかかれる想定が頭の中にあった。
そんなイメージがすぐに崩されて、新聞紙を使ったインスタレーションとともに眼に入る。
無数の円。何重にも重なる円。
それらが色彩をおびながら、独特の風景を描く。
大政愛+塩満幸香の2人と違い、山本の描く絵は抽象的ではあるのだが
展示されている空間に最初からいたように呼吸しながら存在している。
雨が降ったりやんだり、となんだか落ち着かない梅雨の今。
彼女たちの色彩豊かな絵をみて、ぜひ気持ちを晴れにしてみてはどうか。
レビュアー:島矢愛子