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故郷へのノスタルジーやコミュニティの絆を描くアーティスト。国内初となるソワマドゥ・イブラヒムの個展

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ソワマドゥ・イブラヒム「Farewell Savane」

ソワマドゥ・イブラヒムは1989年フランス生まれ。その後、アフリカ大陸東南部のマダガスカル島とモザンビークの間にある、コモロ諸島最大の島、ンジャジジャ島で10歳まで過ごしました。小さな島での生活で養われたのは、社会経済学的な視点からのコミュニティ連携の強さ、複雑な人種問題への眼差しです。フランスで生まれ、親戚が今も暮らすコモロ諸島から遠く離れたフランスで10歳以降を過ごした経験から、アフリカに根ざした自身のルーツの寄りどころのなさが制作のベースになっています。

コモロ諸島は、今回の展示作品《Jardin next door》に出てくるようなバナナや椰子の木が至る所に生い茂る美しい島で、その光景を自身の絵画の背景に取り込みながらイブラヒムは制作をしています。絵画の中の登場人物は、旅行中やふとした時に自身で撮影した、今はコモロ諸島で離れて暮らす家族や友人など、身近な存在の人々。これらのアーカイヴ写真に、自身の記憶や時に想像を交えて絵画を描くことで、誰もが持つ故郷へのノスタルジー、普遍的な家族への愛情やコミュニティの絆を表現しています。例えば《MP3 Files》に登場するイブラヒムの従兄弟が携帯電話を使用していますが、海を越え遠く離れて暮らす家族との唯一の大切な連絡手段である、モバイル機器に対する大小問わず誰にも起き得る愛着や中毒性を表象しています。本展のメイン作品《Better late than never》のタイトルには、「さようならを言うのに遅すぎることはない」という意味が込められています。この作品は、イブラヒムの叔父が、病気で亡くなる母に別れを告げに、故郷より遠く離れた地から彼にとって大切な「サバンナ」であるコモロに帰ってきたところを描いたものです。叔父は母の最期を看取ることは出来ませんでした。しかし、本作のタイトルは、たとえどんなに離れていても駆けつけようとするその気持ちや行為こそが重要であるというイブラヒムのメッセージを伝えます。かすかな笑みを浮かべ、表情を隠すようにサングラスをかけた彼は、「これから起こることは私が何とかするから心配しないで」と力と自信を振り絞って母に語りかけているかのようです。

身近な人々の人生の、あらゆる場面を描写したポートレイトとコモロ諸島の美しい風景、時にはその人らしさを補完する背景や持ち物を想像上で組み合わせることで、人生のシンプルな喜びを見出す豊かさを表現したいとイブラヒムは言います。それぞれの個人の特徴を見つけ出して巧みに捉え、忠実に再現することこそが彼が絵を描き続けている理由であり、例え遠く離れた場所にいても自身のルーツに立ち返ることで、どこにでもある自然の美に焦点を当て、アイディアを強化し、自分らしくいさせてくれる行為なのです。また、真っ直ぐで太い身体的なストロークとヴィヴィッドな色使いには、大学で学んだデザインの知識やノウハウが活かされており、記憶の持続性や記憶を保持し続けることの大切さを私たちに教えてくれます。

今回の展覧会タイトルとなった「Farewell Savane」は、イブラヒムが普段絵画を制作する際にリラックスするために聞いているマリのミュージシャン、アリ・フォルカ・トゥーレの最後のソロアルバムに収録された『Savane』という曲にインスパイアされて付けられました。トゥーレは言います。「砂漠を歩いていると、豊かだったサバンナが干ばつによってどのように破壊され砂漠に姿を変えてしまったか、思いを馳せ立ち止まる。砂漠には緑も草も木もない。しかし、他のどの国に行こうが私の知るサバンナに敵う土地はなかった。この気持ちを表現するにはどうしたらいいのか」と。これに呼応するように、イブラヒムは続けます。「タイトルの『Farewell Savane』の背景には、私たち誰もが持つストーリーと懐かしい風景があり、それに触れるときに感じる心地よさがある。どこかへ旅に出ようと、旅先で出会う味や匂い、風景が私たちのアイデンティティをより強固なものにし、郷愁を誘う。」と。誰もが持つ郷土愛や家族や友人への普遍的な思いは、人種や主義・主張を越え、私たちを分断から立ち返らせる手段になり得るのでしょうか?ぜひご高覧ください。

開催日 2021年11月04日~2021年12月18日
会場 KOTARO NUKAGA(六本木)
会場住所 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 2F 地図
地域 東京 / 港区・文京区(六本木など)
営業時間 11:00-18:00 (火-土) ※日月祝休廊
※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 2F
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