国内最大級アートコミュニティーサイト会員登録数1万人以上

終了しました
カテゴリ
絵画・版画
個展・グループ展・展示会
タグ[編集]
このページにタグをつけてみませんか?

コントロールされた光のペインティングによって「ヘテロトピア」を出現させる森本啓太の日本で初の個展

1149 0 0 1
森本啓太「After Dark」

森本啓太は16歳でカナダに移住し、その地で初めて絵画制作について学びました。なかでも古典絵画の技法や構図に関心を持ち、バロック期の絵画ように完璧にコントロールされた光の表現と、現代社会における日常的な風景をモチーフとして折衷的に組み合わせることにより、独自のリアリズムの地平を切り開きます。特別ではないありきたりな風景の中に美しさや神秘性を生み出し、誰でもない誰かが主人公になる独自のナラティブを生成するその手法は、エドワード・ホッパーやピーター・ドイグなどに代表される「マジックリアリズム」の系譜に位置づけられつつも、現代社会を見つめる冷静な眼差しによって鑑賞者に新鮮な視座をもたらします。


本展で展示されるシリーズにおいて森本は、レンブラントをはじめ美術史の中でも人々を魅了し、神秘的、宗教的に扱われてきた「光」というモチーフを自然的や神聖な現象だけでなく、現代の消費社会の中で人々を惹きつける自動販売機やファーストフード店、駐車場の電飾サインなどにまで拡張し、21世紀の日常的な経験を描き出しています。また、森本は描き出す夜の風景を意図的に特別な場所として特定しうるアイコニックなシンボルから遠ざけます。明るすぎる現代の東京から見過ごされてしまう街の片隅、利用者の少ないローカルな電車の駅、どこかのように見えてもどこであるか思い出せない丘の上、それら特別でない場所にある光をコントロールし、誰とも言えない人物を登場させます。森本は日常生活における通過地点、つまり、アノニマスな場所に光をあて、その闇と光のコントラストによって、一時的に私たちが現実世界から逸脱し、逃げ込める場所「ヘテロトピア」を描き出しているのです。鑑賞者である私たちは森本が作り出したこの、どこかで見た風景のようではあるがどこでもないこの場所、つまり「ヘテロトピア」へと誘われるのです。

20世紀のフランスの思想家、ミッシェル・フーコーが唱えた概念であるこの「ヘテロトピア」とは「ヘテロ=ちがう」と「トピア(トポス)=場所」からなる概念で、「他なる場所」を意味します。フーコーは「生きづらさ」やそれを生み出す権力などについて考え続けた哲学者でした。「ユートピア」が神話的で架空の場所から現実に異議申し立てをするために構想されることに対し、「ヘテロトピア」は、現実に存在するが、他のすべての場所に対して絶対的に他なる場所であり、それらすべての場所を内側から無効化してしまうような「反-場所」であるとフーコーは考えました。つまり、生き苦しさを生み出す現実に対して異議申し立てをし、それに抵抗するためには、架空の世界ではなく、現実世界のその内部に「ヘテロトピア」を構築し、そこにそれとは全く別の現実世界を作り出すことが必要だとしたのです。

「現代社会において、多くの人が生き苦しさを抱えている」と、森本は言います。特にそれは相互監視の社会システムが作られ続けている現代において、私たち自身が無意識のうちに自分自身の外側に規定される価値観に対し、自身の意識を向け過ぎていることで生まれているのではないかと森本は考えています。森本は絵画を描くことで、そういった現代社会の抱えるある種の「生きづらさ」から軽やかに逸脱をしてみせているのです。

私たちはどれだけ何かを奪われたとしても、何気ない日常を特別なものにするという「自由」、つまり自分自身のあり方を決める「自由」は奪われることはないのだということを森本の作品は示唆しています。日常のあらゆる場所に「ヘテロトピア」を出現させること、そこで独自の物語を紡ぐこと、それら日常に彩りをあたえることのすべては、その世界とどう向き合い触れるのかという私たちの選択に委ねられているのです。

開催日 2021年11月20日~2021年12月25日
会場 KOTARO NUKAGA(天王洲)
会場住所 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F 地図
地域 東京 / 世田谷区・目黒区・品川区・大田区(下北沢・自由が丘など)
入場料 11:00-18:00 (火-土) ※日月祝休廊
イベントURL https://kotaronukaga.com/exhibition/after-dark/
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
九州・福岡
2025/1/5 ~ 2025/2/16
東京・千代田区・中央...
2025/2/15 ~ 2025/3/18
東京・足立区・北区・...
2025/2/1 ~ 2025/2/28
九州・福岡
2025/1/24 ~ 2025/2/2

まだこのイベントが書かれたブログはありません。

会員登録をしてコメントしよう!

同じカテゴリーのイベント

開催前 2025年2月18日(火)

2025年2月23日(日)
東京 渋谷区・新宿区(表参道・青山など)

ACT企画 山本冬彦 推薦作家による日...

本展は、コレクターとして長年若手作家を中心に蒐集しつつ、展覧会の企画発案も行い、アートの普及を...

開催前 2025年2月18日(火)

2025年2月23日(日)
東京 渋谷区・新宿区(表参道・青山など)

超視線展2024年優秀賞受賞者グループ...

本展は2024年6月に開催された「超視線展」の受賞者による企画グループ展です。

もうすぐ開催 2025年1月28日(火) 11:00

2025年2月2日(日) 17:00
東京 渋谷区・新宿区(表参道・青山など)

オガワミチ 個展『おまけで雨』

日常の一瞬に宿る特別な瞬間、光と自然の移ろい、透明感を感じさせる表現をテーマに、アクリル板やド...

開催前 2025年2月11日(火) 11:00

2025年2月16日(日) 17:00
東京 千代田区・中央区(銀座など)

伊藤興秋 書画展 生きている書と水墨 ...

生きた書を書くのに最も大切なのは呼吸です。筆禅道は禅や気功で練り上げた吐く息で、墨に命を吹き込...

このイベントに行きたい人2人

  • gami1210
  • crowmania