FOOTPRINTS
2022年5月21日(土) ~2022年6月25日(土)
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自身の代表的なモチーフが集団を作るインスタレーション群を提示します。
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イベントDATA
近代以降、世界を変化させることで私たち人類は価値を生み出してきました。現在、私たちは人類の活動が地質や生態系にまで影響を及ぼす「アントロポセン(人新世)」という時代を生きていると言われます。かつては畏敬の念をもって向き合っていた自然と人間の関係は今や大きく変わってしまっており、「手つかずの自然」などと呼んで、絶景と称える風景にさえ、人類の及ぼす影響は確実に迫っています。ここで、練馬区立美術館副館長・毛利義嗣氏が本展覧会に宛てたテキストを紹介し、本展についての考察を進めます。
「 」のことを語るのは難しい。初めて訪れる上石神井の平子さんのアトリエのちょうどすぐ前の通りで、JAの行商のイチゴ屋さんが来たのでお土産に買って入った、そして平子さんと、たくさんの「 」に迎えられた。アトリエで話し、平子さんと私では少々年代が違うのだが、彼が岡山出身で私も瀬戸内育ちで、子供の頃に経験した自然はいくぶん共通性があるようだ。子供の頃は裏山で遊んでいた、適当にミカンだのツクシだの植物をとっていた。けれども、自然、花、草、空、月、道、壁、家、歌、といったことばが意味するところは、語る人の出自や経験、環境によってまったく違うところがあるらしい。 単に美しいモチーフではない自然と人間の関わりは美術でも様々にある。かつて工藤哲巳が「広島の化石」で試みた植物としての人間の傷。たとえば中林忠良の「すべてくちないものはない」として腐食版画で遺した植物の繊細な跡。あるいは大竹伸朗が、女木島の、アートサイト「女根」で行なっている植物との拮抗。 そして「 」はイキているちょうど中間くらいに住んでいて、別の場所への案内をしてくれるようだ。動物としての「 」、猫の隣の「 」。 上石神井駅の近くのアトリエでは制作途中の作品を見せてもらった。「 」が繁殖していた。たぶん次の個展ではもっとたくさんになっているだろう。集団は人間らしさそのものだ。 ヨーロッパの「 」がこんなにもひどく混乱しているように見えるが、日本もまた「 」というような表現がある。平子さんはたぶんその中で戦っている。
毛利氏が平子のモチーフに名称を与えず「 」としたことは、自然というものと向き合う私たちに向けたメッセージであると言えます。毛利氏が本テキスト内でも示したように、「自然」も含めたさまざまなことば(ほかに花、草、空、月、道、壁、家、歌など)が意味するところは、それを語る人の背景によって全く違う。平子が「 」を制作するきっかけとなる、ロンドン留学時に感じた「自然」に対する関わり方の歪さもこの違いから生まれています。つまり、「自然」というものは人の概念に先立って「アプリオリ」にあるものではなく、実は「アポステリオリ(より後なるものから、の意)」として経験に基づき後から現れるのです。その意味で「自然」は主体者それぞれにとってある意味で感覚質的なものであり、クオリアなのである。つまり「自然とは…である」と言った時の「…」は共通してある何かではなく、私たちは「自然」ということばを実は正しく共有していない。記号論的に言えば私たちはことばとしての「自然」というシニフィアンを共有しているだけで、それが何を示すのかというシニフィエが共有できていないのです。このことを毛利氏は「 」として示している。言い換えれば、この「 」に何が入るのかは鑑賞者それぞれが考えるべきことであるということを言っているのです。
この数年の世界の説明できない状況は、私たちが世界をわかった気になっていただけなのかもしれないという現実を突きつけるものでした。人がいなくなったことで澄み渡る空が戻る一方で、観光収入の減少によって保護がままならなくなる自然がある。本当に「手つかずの自然」なんてあるのだろうか?多くの人が「自然」という概念を共有、理解した時、その思考はどこへ向かうのだろうか?
平子がロンドンで感じた自然への解釈をめぐる違和感をきっかけに、深い思考の中「自然」との間に生まれた「 」。「 」もそこに存在するがそれが何であるのかは「自然」と同じように「アポステリオリ」に、それぞれの人の中に現れるのです。本展「FOOTPRINTS」において、平子は様々な「 」を展示します。
開催日 | 2022年05月21日~2022年06月25日 |
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会場 | KOTARO NUKAGA(六本木) |
会場住所 | 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F 地図 |
地域 | 東京 / 港区・文京区(六本木など) |
営業時間 | 11:00 - 18:00 (火-土) ※日月祝休廊 オープニングレセプション: 2022年5月21日(土)16:00 – 18:00 ※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。 |
イベントURL | https://kotaronukaga.com/en/ |
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