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このブログで紹介するイベント

吉左衞門X 暗闇の音 静寂の光

<佐川美術館> メディア・アーティスト高谷史郎氏と樂吉左衞門氏とのコラボレーション展です。

さてさて、久々に、滋賀・琵琶湖畔にある

佐川美術館に行ってきました♪

毎年、秋~春先までやっているシリーズ吉左衞門X

これは、千利休より乞われて茶碗を制作した初代長次郎から続く

樂焼の15代 吉左衛門(以下、当代)さんと、

”何か”違うジャンルのアーティスト(つまり、X エックス)が、

繰り広げる展覧会です。

当ブログでも、2007、2008、2010年と、紹介してきましたが、

シリーズ4回目は、高谷史郎さんとのコラボレーション。

高谷史郎さんは、1963年生まれ。

1984年創設、アーティストグループ「ダムタイプ」のメンバーです。

私は知らなかったのですが、坂本龍一さんと共同制作インスタレーションをしたり、

以前ご紹介した、中谷芙二子さんの”霧”の作品を一緒にしたりしているそう。

(私が見た、2008年横トリの三溪園でのインスタレーションは、参加されたのかわかりませんでした)

あの中谷芙二子さんの”雨月物語”は、最近忘れっぽくなったゆこもりでも、

今でも、衝撃を覚えている作品です…。

今回、キューレーションした学芸員さんから、聞いたのですが、

実は、昨年の10~11月にかけて、今回の展覧会のイベントとして、

茶室の周りに、”霧”を演出したのだそう!!

くぅ~、見たかった~~。

茶室周りの葦と相まって、とても幻想的だったみたいです…。

で、当代も参加の茶会までも開催されたという…。

参加できた方は、羨ましい限りです、はあ(ため息)…。

ちなみに、ゆこもりは見られなかったのですが、

今は、3/3までの金・土・日・祝日に、高谷さんが光で演出をしているそうですよー。

本当に見たかった…。 残念…。

で、本題ですっ

樂吉左衛門館は、まず、階段を下りて、地下に潜ると、

エントランス・ロビーに5台のスピーカーが。

何やら、音がします…。

しかも、コンクリの壁に響き、違うところから。

で、よく見ると、スピーカーも360度回転しています!

よくよく聞いてみると、どうやら茶碗を削る制作中の音とか、お茶会での音のよう。

ここだけでも、その場での臨場感、緊張感が伝わり、

ピリッとした空気が心地よい感じでした~♪

で、展示室内部はというと、

「守破離」それぞれのスペースになっています。

まず、入ってすぐの「守破離の彼方」の間は、

当代の最新作 焼貫黒楽茶碗に

こともあろうか(笑)、三方から、レーザー光線&白い光が照射されていました。

でも、いつもと違った茶碗の”肌質”が見られて、新鮮♪

光をあてるから、いつもとはまた違う、陰影が見られるんですね。

緑のレーザーが当たると、釉薬がキラキラ光って、キレイ…。

あと、光を上から下に、徐々に退光(つまり、光をなくす)していくと、

まるで、釉薬が溶け落ち、流れ落ちるよう!!でした

すごい視覚効果♪

単に映像だけではない、”光”の作品の可能性を垣間見た気がしました。

当代曰く、

”0でも1でもない領域の遍在=自然と、

0もしくは、1お二項に抽象化される事象=人工との

ダブルスタンダードを我々は生きている。

「0 or 1」という論理的虚構が、実在としての茶碗をも虚構化していく”とのこと。

そして、レーザー光線を浴びる茶碗に対して、

”それは、想像に反して、闇の中で美しく明滅をくり返す茶碗の姿であり、

「実在」を奪われ、浮遊感を伴いながら、どこかせつなく、哀れに美しく私は感じた”とも。

そう…

普通の茶碗の見られ方からはありえない、

敢えて言えば、まるで今までの”存在”を否定するかのような見せ方。

それを、当代は、”「実在」を奪われ”と表現したのかな、と思いました。

ただ、そう見せることで、”存在”に内包される権威などを脱ぎ捨てさせ、

一塊の”もの”として、改めて見たとき、”どこかせつなく、哀れ”かな、と。

そういう意味では、高谷さんの”目論見”は、見事成功という事でしょう!

で、続き…

次の間は、「昼の航海」。

ここでは、高谷さんの雲の写真と、茶碗のコラボレーション。

茶碗のタイトルが”洸雲に浮かれてⅡ(2003)”とか、

雲の写真にに合わせた当代のしゃれっ気でしょうか。

さらに対の間「夜の航海」では、

Topographという、茶碗の外周の連続パノラマ写真と茶碗とのコラボ。

これも、面白かったです。

茶碗の展示って、後ろが見えづらいじゃないですか。

それを、全て見せてくれるというだけでも面白いのですが、

平面に連続で見せることで、

なんだろう…、実物を見るのとはまた違う見え方がするんです。

そう、何か新しいデザイン・意匠のようでした。

例えば、”吹馬”は、正面の黒釉の流れが、まるで馬の様なのですが、

それを真ん中にして、一つの絵の様でした。

こういう映像などを使う作家さんは、

”見え方”の新しい提案をするのが、真骨頂なわけでしょうから、

そういう意味では、まんまと高谷さんの術中にハマっちゃいましたねー(笑)

で、さらに奥の「破の守」の間では、

camera lucidaという、茶碗の一部をレンズで映して、逆さに見せるもの。

これは、一部を逆さに、しかもぼかせて見せているので、見づらい(笑)

まあ、そこが”売り”なんでしょうが、これはイマイチ、ピンときませんでした(苦笑)

で、隣の「破の破」の間は、

映像作家さんらしいビデオを使った Toposcan という作品と茶碗。

これは、茶碗の外周を、今度はビデオで撮影し、左から右へとロールさせ、

さらに、色に”分解”して、まるで映像ノイズのような”線”にしていました♪

う~ん、見たら一瞬なんですが、文字で書くと、無理が…(苦笑)

これも、色に分解することで、

この茶碗は、全体的にはこういう色味なのね~、と思いました。

で、最後の「離」の間。

ここでは、「離」、つまりまあ、今流行でいうところの破天荒ってところ!?でしょうか。

もう、茶碗を見せる感じではありませんでした(爆)

120°projection という、茶碗をスクリーンがわりにして、画像を投影するという暴挙!

しかも、その映像は、「戦争」「災害」といったキーワードを無作為で抽出したものだそう。

これのために、当代は、作ったことのない「白い焼貫茶碗」を高谷さんの依頼で、

一年かけて制作したそうです。

あとで学芸員に聞いたら、当代は「白」に特別な思い入れがあって、

茶碗で、白だけというものは、制作したことがなかったそうです。

あと、ひしゃげ具合がまるで、画像を投影しやすくするかのように、

平面っぽくなっているように見えたので、聞いてみたら、

そういうことはしていなくて、あくまで、”使うもの”として、制作されているとのこと。

そうですよねー、そこまで、妥協?というか、歩み寄るというかしたら、

茶碗、しかも樂家という枠組みから、はみ出ちゃいますものねー。

でも、当代の、樂家の樂茶碗というレギュレートの中での、

ギリギリの挑戦は、あの展示空間と相まって、まあ、ワクワク・ドキドキ…。

改めて、伝統というのは、その時代とともに生き、その時代の先端であるべきなんだな、と

当代の活動を見て、つくづく思います。

くぅ~、痺れたー!!

4/7まで。上記したイベントも是非♪



佐川美術館 HP

http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/cgi-bin/raku/detail.cgi?file_id=20120929_00000014