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コスメティック(化粧品)はコスモを語源とする。石器時代、人々は泥を肌に塗り、石をアクセサリーにし、未知なる宇宙(秩序)との対話を図ろうとしていた。しかし近代史にある産業革命は、人に自然を操作する術を与え人が秩序とするものだった。国芳は西洋画に興味を持ち、コレクションを他人に見せるほどのコレクターであったが、その研究から彼は、西洋人(人)が宇宙(秩序)を生み出していくとする思想を知ったはずだろう。そこで彼はアルチンボルトを参照にしながら、顔に裸の“人”を着せる=コスメティックと皮肉ったのである。アニミズムが存在する日本人から見れば、西洋人のその考えは先進的であり、暴力的であったはずだ。
 さて、私はそんな国芳が考えたコスメティックを文字に置き換えてみた。現代日本人は文字を盾に自分を保持する。もっぱらSNSをはじめ情報コミュニケーション手段は普及し、私も仕事からプライベートまで幅広く使用するほど、生活する上で必要不可欠なツールになっている。その中で喜怒哀楽などの、特に日本人が素直に伝えられない言葉は絵文字やスタンプなどで代便できるようになった。人は本来、自ら対話(コミュニケーション)を欲する種族だったのに対し、今は情報を盾に自分自身を社会へと送り出せる時代に代わったのである。だから今度は私が、国芳の絵を題材に文字をコスメティックとして扱いながら、日本の現状を考えてみようと思う。

2016 沈く
117×117cm
高知麻紙、墨

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絵画・版画
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