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ドクロの幻影と記憶
2018年・京都ギャラリーソラト「髑髏狂典」出展作品・神戸シャレコーベ・ミュージアム所蔵
メキシコは祭典「死者の日」が出来る以前から骸骨を飾る文化風習があった、そこに至るまでに何があったのかを描いた作品です。マヤ文明のピラミッド「チチェン・イッツァ」を現代の「死者の日」の祭壇に見立て、マリーゴールドの橋を頂上にそびえる人類の祖・二足歩行のアウストラロピテクス「ルーシー」に架けて生命の繋がりを表現しました。神殿の御許で民の心臓をえぐるのは、マヤ文明とアステカ帝国の最高神ククルカン(ケツァルコアトル)太陽信仰に基づく生贄儀式の様子です。生贄は信者が志願することもあったようで、身体を青く塗ったと記されている。生贄となった民の頭蓋変形はマヤ文明でよく見られ一般的な身体改造だったとされる。高貴な人間は尖った頭に、普通の人間は筒のような頭。赤子に頭蓋変形を施した理由は美的なものを求めただけでなく、身分の違いを示したり、他へ逃げたり、身柄を偽ったりできないように運命を定めるためだったという説もある。幻覚サボテン・ペヨーテを使って先祖や宇宙との導きを得るシャーマニズムの背景にあった古代神話と信仰。現代に残るウチョール族の特徴的な模様を纏った霊長の母「ルーシー」、後の子孫のホモサピエンスが頭蓋骨の中で見た幻覚と遺伝子の記憶の意識境界を混濁させ、太陽の無い空にシナプスを張り巡らせている。様々な宗教を受け入れつつ、いつまでも自然にドクロを飾るメキシコの人々の習慣を空想すると、彼らの習慣が地球そのものを巨大な頭蓋骨に包まれた、意識や夢や幻影の中で死者と生者とが区別無く共にあると伝えているように感じました。

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