エルフランドの風
ここは滅多に人の訪れない隠れ里。
昔はもっともっと広かったんだけど、いまではこの有様。
それでもかろうじて残っているのよ。
ここでは子どもたちの歌う歌だけがときどき微かに風に乗って運ばれてくるわ。
彼らのいまにも消えてしまいそうなか細い歌を、穏やかな風が運んできてはアネモネの花を揺らすの。
でも風はときに荒々しくもなるわ。
そういうとき、風は歌だけではなくて小さな子どもたちそのものを連れてくることもあるの。
神話でかつてヒュアキントスを殺めたゼフュロスの風もこんなふうだったかしら。
夕暮れどきになるといまでも目にすることがあるのよ。
どういうわけかここへ迷いこんでしまった小さな子どもたちの姿を。
彼らがやってきたことはすぐに分かるわね。
なぜって彼らはいつもキャンディの匂いがするんだから。
彼ら、彼女らは少しの間遊んでいたり、泣いたりしているけれどいつも最後には塔の中に住んでるデュラハンに捕まってしまうわ。
デュラハンは自分の首を、自分の手にぶら下げている精霊よ。
大きな馬に跨って、夕暮れどきになるとこのあたりの森の中を彷徨っているわ。
それで子どもの姿を見つけると、さらっていってしまうのよ。
小さな迷える子どもたちは一度捕まえられると、もう塔の中から出られないわ。
永遠に成長することもなく、塔の中でデュラハンに追いかけられ続けるのよ。
塔の中では何もかもがあべこべだから、階段を上がったと思っても、実際には下りていることになるのよ。
時計の針も真実とは正反対の時間を差しているわ。
だから風に乗って塔の外まで聞こえてくる子どもたちの歌声も、ほんとうは叫び声だということになるわね。
かわいそうだけれど、私はとても彼らの力にはなれないわ。
だって私ときたら、吹けば飛ぶような頼りない存在なんだもの。
そう、いつも風に揺れてばかりのあのアネモネのように。
いずれにしても子どもたちの声も何もかも、全てはやがて風に運び去られてしまうわ。
- カテゴリ
- スタンプ・スクラップ・コラージュ
- 絵画・版画
- 立体・彫刻
作成者 | |
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作成日 | 2020年09月01日 18:17 |
BRAVO SEAL
FAN 7
PICKUP GALLERY
そんな数字たちにスポットライトを当てた連作です。
自分が感じる数字に感じる性格や色、感覚、雰囲気、空気感などのイメージを膨らませて、スクエアに閉じ込めた作品。
●出展者(作品形態・ジャンル)
◆甘雨 (書)
◆KOBORI KANAE (写真・詩)
◆高森圭(水彩画)
◆どら くろわ (写真)
◆小林礼奈 (日本画)
◆佐藤瑛美 (写真)
◆昴 (イラスト)
◆Aya Tarumi (写真)
◆tetgraph (コラージュ)
◆hami.co (写真)
◆レナコ (水彩)
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