時代遅れの街にささやかな変化の風が吹く
「この時間はいつも
駅に置かれたラジオから
人生相談の番組が
聞こえて来るのだが、
停車中の間
ずっと演奏を続けている
2両目のオルガンの音のお陰で
回答者の答えの肝心な箇所は
全く聞き取る事が出来なかった。
尤も、相談内容は
今の所、僕には
縁の無い悩みのようだった。
書棚の本に目を通すフリをして
窓からこっそり
夕焼け空を眺めるのが好きだったのに、
今日は窓の前に観葉植物が鎮座していた。
誰かが置いて行った物なのか、
それとも植物がこの日偶々
夕焼け空を見に来ていただけなのかどうかは
判らなかった。
扉を閉ざした
ロケット型のタイムマシンの前では
翼の生えたさすらいのギターが
路上ライブを行っていた。
寝床のギターケースの中には
自らの演奏を録音した
CDやカセットテープ、
ごく僅かな枚数だけプレスされたと言う
アナログ盤を並べている。
その傍らでは
自らのインターネット番組のチャンネルのアドレスや
何かの暗号めいたもの等が記された
キャプションも設置されていた。
各地を放浪している
ギターの話によれば、
今や先進諸国のみならず
多くの国でこのスタイルは
当たり前となっているのだそうだ。
何処かで過去がバタンと閉まった音がした。
きっと風に吹かれて閉じたのだろう。
こんな事を口にすれば
僕の頭がおかしくなったと言われるのだろうな。
だけど、時代遅れのこの街でも
少なくとも何人かは
その事に気が付いている筈さ。」
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A4サイズ(210×297)程に切り取った水彩紙に
水彩色鉛筆、水彩絵の具で描いたもの。
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作成日 | 2021年01月26日 19:37 |
BRAVO SEAL
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